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左巻先生 湯本所長 対談

科学を好きになったきっかけは?

子どもの理科離れは本当か?

湯本:でんじろう先生の子ども時代についてお聞かせください。
でんじろう:とても田舎の環境で育ったので、周りには日用品や駄菓子屋のような小さいお店がいくつかあるだけで、気の利いた子ども用のおもちゃとかはありませんでした。
そのような環境でしたから、竹とんぼや、竹筒の空気でっぽうなど、身の回りにあるものを使った伝承遊びをよくしていました。
湯本:子どものときの体験、経験したものは大人になってとてもいきてきますよね。
でんじろう:身近な材料で作るものが多かったので、教科書や図鑑で覚えるのではなく、実体験を通して自然と覚えていきました。
植物や生き物が生活に浸透していたので、自然と理科に興味がわいてきていました。学校で習うことと生活の中での実体験とがつながっている点で、メリットが多かったですね。
湯本:でんじろう先生は子ども時代にいろいろなことを生活の中で経験できたことによって、バランスのとれた教育を受けた、体験ができたと言えますね。今の子どもたちには求めようとしてもできないことですよね。
でんじろう:日々の生活の中の体験が、観察や実験につながっていたので、そういう意味で恵まれていました。
湯本:経験や体験は必要だと思いますか?
でんじろう:小学校時代、とくに好奇心が旺盛な子ども時代には必要だと思います。
湯本:私もそう思います。小学生のときに何もしないで通り過ぎてしまうと、理科離れ・科学離れをおこしてしまいます。だから小学生のときに「どんな経験をさせるか」、「どんな体験をさせるか」が一番大事です。それは放っておいたらできないので、大人が経験・体験ができる環境を作ってあげないといけないと思います。

子どもの理科離れは本当か?

科学を好きになったきっかけは?

でんじろう:人間はほとんどのことを学んでできるようになる生き物なので、本能的にできることは少ないです。小さいころに学んだことは無意識のうちに体に染みついていて、大人になってもいきてきます。さらに体験を通して得たものは応用が利くので、それを原点に様々な場面に対応することができます。例えば、火の取り扱いを体験していると、火に関する実験、火に関するいろいろな対応が自然とできるようになります。
湯本:われわれの子ども時代はいやでも体験するので、知らず知らずのうちに身についていました。今の子どもたちは日常生活で体験することが難しいため、そういった環境に置いてあげなければいけません。しかし、学校の理科の時間は減ってしまい、実験の時間も減ってしまいました。学校にそれを期待するのは無理なところがあって、だからといって親がすべて教育できるかというとそれも難しいですね。
でんじろう:昔は「よく遊びよく学べ」という言葉にあるとおり、学んでばかりいてはだめで、自ら遊べない子は良い大人になれないと言われました。今の子どもは昔と比べて遊ばなくなっています。それは大人がよく学ばせることには熱心だけれども、遊ばせることに熱心ではなくなってしまったからです。昔は遊びを通して体験がしみこみ、物がないので工夫して遊ぶことを覚えました。遊びというのは企画であり、工夫でもあります。ですから、
「工夫する力」というのは遊びの中で身についていくものなのです。今の子どもたちは、大人が用意した学びの場に行くので、効率よく学ぶことはできますが、自ら何かを「工夫する力」を身につけるのは簡単ではありません。だから、今の子どもたちには、自由度を高めた体験の場ができれば良いと思います。

子どもの理科離れは本当か?

湯本:弊社には科学実験教室があります。今、学校では授業時間の問題などがあり、十分な実験時間が確保できていないため、思うように実験させようという場を提供しています。手先を使っていろいろさせるので多少の危険はありますが、創造力が育まれます。そういった体験も一つの方法としては有効なのでしょうか?
でんじろう:そうですね。体験させることが必要です。体験の中には想定していないことがたくさんあります。そして、それを解決するために工夫します。そのような体験が子どもの発達において一番大切なことだと思います。体験というのは、その子その子に別々の意味で豊富な経験の場を与えることにつながるのです。実体験の場合、本や映像の限られた情報量でない、たくさんの情報を持っていて、意識していなくても全部吸収しています。体験したことと勉強したことが合わさるとものすごい情報量になるのです。だから、実際に何かを体験する場、例えば学研の実験教室が広がっていけばすごく良いし、サマースクールなどのイベント体験でも、夏休みの思い出ではありますが子どもにとっては非常に影響が大きいです。
湯本:でんじろう先生と学研で行った実験教室に参加した子どもが、指導者にテープの貼り方で褒められたんですね。その子はそれがきっかけで科学実験が好きになり、大学は理系に進んで人力飛行機の研究をしたり、「鳥人間コンテスト」にパイロットとして出場したりもしました。その経験をいかして現在は立派な技術者になって活躍しています。だから、あるときの一瞬がきっかけになって、いろんなことを体験していくたび、自分に合ったことや好きなことを見つけるから、突き進めるようになるのだとむことができると思います。
でんじろう:子ども時代は単なる準備期間ではありません。大人が勝手に子どもの将来設定をもとに、あれこれやらせようとしても、今を生きている子ども自身が楽しくなければ意味がありません。そしてそれを無視していると将来元気のない大人になってしまうと思います。子どもは遊びや好奇心を刺激することが好きで、興味を持ったら集中してほかのことを忘れるくらいものすごい力を発揮します。
湯本:子どもは吸収力があるから、いろんなことを体験させると良いですね。もちろん勉強もしなくてはいけないけれど、遊びも思いっきりやれば元気な大人になると思います。
でんじろう:子どもが夢中になれることを見つけてあげれば、子どもは十分に育つと思います。夢中になれることがビタミンのようなものだとすると、“学校で学ぶことは主食”、“学校以外の場で学ぶことはビタミン”のようなもので、子どもに成長に必要だと思います。
湯本:だから子どもにいろいろやらせて、その中で判断して好きなことを思いっきりやらせるのが良いですよね。そういった中に、五感をフルに使った体験ができる実験教室があって、実験教室が広がることで科学に興味を持つ子どもが増えると良いですね。

子どもの理科離れは本当か?

子どもの理科離れは本当か?

科学を好きになったきっかけは?

でんじろう:研究は発見であり新しいものを創り出すことなので、学んでいるだけではダメです。自分で問題を発見しなければいけない。そして、それをどうやって解決するか、アプローチをどうするか考え、膨大な試行錯誤をしていくことが必要です。それには子ども時代のいろいろな実体験が大切になってきます。僕は新しいものを生み出すのは頭の良し悪しじゃないと思います。それよりは、問題点を無視せずに何とかしようと繰り返し試行錯誤して、あきらめずにやり続ける力だと思います。山ほどの失敗と少しの成功を何十年と繰り返していくうちに、勘が働くようになり効率が良くなってきます。そのためには膨大な試行錯誤が必要で、それを嫌にならない「くじけない心」を育むことが大切だと思います。
湯本:そういった「くじけない心」がどこで培われるかというと、子どものころの「失敗体験」ですね。自分でやれば全部成功するわけじゃないですからね。
でんじろう:そう。ほとんどが失敗です。でも失敗で良くて、それはそれで意味があるし楽しいことなのです。成功することやテストで良い点をとることばかりを意識していると、失敗したときに挫折してしまいます。だからたくさん失敗しても大丈夫、それはそれでいいんだという意識でいないと、例えば発見や発明、技術開発などは生まれないと思います。
家事でも日常でも、いろんな現場の人たちが何とか今の状態を良くしようとする文化があれば、たくさんの試行錯誤の中で、良いものが生まれて受け継がれていきます。「創造性を育む文化」という枠の中に、たとえば理科、教育とか、科学とか研究開発、そういうものは無縁ではないと思います。「科学技術立国日本」という言葉はあまり最近聞かない言葉ですが、科学技術だけを大切にするのではなく、至る所で「創造性を大切にするような文化」をつくっていくことが大切です。創造性は試行錯誤が必要であり、遊びの一つなんですよね。
湯本:結局、でんじろう先生も私も同じだと思うのですが、何か新しいものを生み出す楽しさを知っていると、挑戦して、同じことを繰り返したりすることができるんですよね。子どもたちには、子どものときにたくさん失敗してもらって、将来、新しいものを創造できる大人になってほしいですね。

科学を好きになったきっかけは?

子どもの理科離れは本当か?

でんじろう:僕の仕事はパフォーマンスであり、表現なので、「驚き」とか「不思議さ」がないと意味がないわけです。原理を教えるだけでは誰も振り向かないので、表現するところにアイディアがあるわけです。だからどう表現するかで頭を悩ませています。
湯本:では伝える一番の工夫というのはいかに驚かせて興味をひかせるかに尽きるのですね。
でんじろう:そうです。例えば電気の力を使っていろいろなものを浮かばせるとなると、いろいろと試します。ティッシュを浮かべるだけでも、人形型にしたり、一反もめんにしたりと、どうやったら面白く見てもらえるか、という工夫を延々と試すのです。特にテレビ番組は大変で十分面白いじゃないですかと言っても番組側にはなかなか伝わらないこともあります。でも、結構面白いことを言ってきたりするので、結局チャレンジしてしまうのです。そして、実験について考えるのですが、これ面白いなぁといった意外性のある実験は1年に1回もありません。頭で考えてできているものには意外性はありません。自分でも意外だから意外であって、こういうのは数をやって当たるしかないです。ただ数をこなすときは重要なことを見落とさないための経験とか、どういう方向性で試行錯誤するかとか、そのような勘がないと徒労で終わってしまいます。ある程度は勘が働かないといけないと思いつつ、やはり膨大な試行錯誤がないと絶対できません。
湯本:わかります。頭で考えることって大したことは考えられないですよね。それでよく子どもたちには「手で考えろ」って言ったりしますが、つまり実際に手を動かして試行錯誤すると、思いもよらない発見があるんですよね。
でんじろう:実際にやるといっても、単純なものでもノウハウが必要になってきます。書かれている事実、見る事実以上に、やってみるともっともっといろんなことがたくさんあるのです。本や映像だけで表現しきれないことが山ほどあるのです。それは実際にやって、見てみないとわからないものです。しかも、うまくいくときもあれば、失敗するときもあります。そうすると、その場合をどうやって解決するんだって問題がでてくるので、試行錯誤を繰り返して、解決に向けて問題に取り組みます。つまり、実際にやることはそんなに単純ではないのです。

普段の生活に疑問を持てると面白い

でんじろう:日本は繊細です。昔の日本の道具は多目的に使えます。一つの道具でいろいろ使い回しをして、技の方を磨こうとするからです。西洋では何かするためには、専用の道具を作ります。こういう作業をするにはこういう道具など、不器用な人間でもより便利な道具を使うのです。どっちが良い悪いじゃないですが、日本の大工さんなら木箱の道具箱一つ背負って家を建てられるわけです。日本人は手先の器用さと言えば表面的だけれど、創意工夫によってなんとかするということに価値を見出しています。日本家屋を例にすると、日本家屋は狭いですが、その中で、居間にちゃぶ台を置いてご飯を食べたり、ちゃぶ台を片付けて寝室になったりと、空間利用の工夫によって効率的な使い方をするのが日本人だと思います。
湯本:例えば専用の道具がなくても、違うもの・身近なもので代用する、それも一つの日本の良さと捉えて良いでしょうか?

子どもの理科離れは本当か?

でんじろう:良いと思います。身近なものを使って面白いこと、そこに科学の原理がいきている実験をやると、日本では喜ばれます。でも、特別な装置を使うとあまり喜ばれません。そういう傾向が多い結果、私は装置的なものは使わないようにしました。日本人はそういうシンプルなものを嗜好する傾向がどこかにあるのかなという気はします。
だから、これが一種のガラパゴス的な一つかもしれないと思います。例えば日本人がアイディアとして出せるものは、「身近なものを使った実験の工夫」や「実験器具の工夫」といったもので、それはおそらく日本人は得意なんですよ。
一方で欧米の人は凝るのが好きで、例えば、エジソンの蓄音機を再現しようとすると、必要な材料をしっかり揃えて、エジソンがやったこととそっくりなことを行ってできたとする傾向が強いです。でも湯本さんが行った蓄音機のように、コップと針で再現してしまうと、欧米の人は、日本人はすごい!となるのですが、こういった日本人の創意工夫の強みというのが、ガラパゴス的であるために伝わりにくいのです。
教育や教材についても同様で、日本人は非常に細かい工夫やアイディアを出します。物がなくても他のもので代用するので、発展途上国と協力することができます。また、先進国では代用品で実験するとすごくと喜ばれます。しかしそこにお金の流れる仕組みがありません。そういった日本のガラパゴス的な仕組みを変えなければ、日本の良いアイディアや科学教育が広がるのは難しいと思います。
湯本:創意工夫ができる繊細さが日本人の強みです。そういった想像力、表現力を養うためにも、国内外問わず、もっと科学実験教室が広がって、世界に日本の良さが発信できれば良いですね。これからも科学の楽しさを広めることに、お力をお貸しください。本日はありがとうございました。

プロフィール

米村 でんじろう(よねむら でんじろう)
1955年、千葉県に生まれる。
東京学芸大学大学院理科教育専攻科修了後、自由学園講師、都立高校教諭を勤めた後、広く科学の楽しさを伝える仕事を目指し、1996年4月独立。
NHK「オレは日本のガリレオだ!?」に出演、話題を呼ぶ。1998年「米村でんじろうサイエンスプロダクション」設立。
現在、サイエンスプロデューサーとして科学実験等の企画・開発、各地でのサイエンスショー・実験教室・研修会などの企画・監修・出演、各種テレビ番組・雑誌の企画・監修・出演など、さまざまな分野、媒体で幅広く活躍中。
湯本 博文(ゆもと ひろふみ)
学研科学創造研究所所長。
早稲田大学卒業後、株式会社学習研究社入社。学年別科学雑誌「○年の科学」シリーズの企画・編集に携わり、1年・4年・5年の編集長を歴任後、「大人の科学」シリーズの開発を担当。イベントや講演、TV番組の企画・出演など幅広く活動中。

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